「家族のためにごはんは作る。なのに、自分で作ったごはんを食べたくない。おでん、いいなー」
気のおけない友人との、本当に何気ない会話のかけら。
その2日後、クール便でお手製おでんが届いた。
発泡スチロールの蓋を開けたら即、出汁の香りがした。クール便なのに!
心身共に疲れ切っていて、今日も全く食べられなかった私の胃袋が目覚めたらしく脳に「早く温めろ」と指令を出す。
出汁がしみっしみのおでん。早速あっためていただきましたよ。
五臓六腑に染み渡るうまさ(ここはあえて「おいしさ」ではなく。ああ、私にもっと語彙力があれば、この味を伝えられるのに)。
いや、おでんそのものうまさだけではない、心がこもってるからこその深い味。それは宅配便で運ばれる中で熟成されたもの。
彼女が私の声からピンチの信号を受け取り、送ってくれたのだ。
それを知ったのはお礼の電話をしてわかった。
「つきちゃん※、あん時(おでん、いいなーと話した時)、本当に食べたそうだったからさ」
※彼女は知り合った当初の私のブログのハンドルネームで十数年こう呼んでいる。
スピード優先。
鍋の残ってるおでんをジップロックに入れ、クッキーや味醂干し、自家製梅干しなど家の中の美味しいものをかき集め送ってくれたらしい。
それをなんと1,200キロ離れた場所から届けてくれたのだ。
おでんならコンビニで買うこともできる。第一、送料を考えたらむしろそっちの方が安い、早い。きっと友達はそんなこと百も承知で梱包して送ってくれたのだと思う。
人の心を動かすものは総じて、予想の遥か上をいく行動や言葉から生まれる。
彼女の愛情のこもったおでんで私は復活した。
次は私が、粋に「愛」を渡せる人になりたい。