静かな大晦日です。
少し前に読んだ本が面白かったので紹介します。
本日の洋梨「ゴールドラフランス」とともに。
(おなかの中にすでにおさめました)。
【大雑把なあらずじ】
元女優の正子は年齢詐称をしてスマホのCMにおばあちゃん役として出演。これが大当たり。しかし優しいおばあちゃんのイメージとはかけ離れた私生活、仮面夫婦だったことが世間にバレて芸能界を干されてしまう。敷地内別居をしていた夫と離婚することを目標にしていたが、その夫も亡くなる。夫は多額の借金があり、住んでいた屋敷の解体費用も膨大ということが判明。おまけに夫のファンだったという杏奈も居候をはじめる。
正子はお金を稼ぐために屋敷内のありとあらゆるものを売っぱらい、周りの人を巻き込みながら屋敷をお化け屋敷としてオープンさせるなど勢いのある人生をかけぬけていく。
読みどころ1:アンティーク品をバカスカで売っていく正子と杏奈
誰かが見れば高価なものかもしれないけれど、生きるためのお金が必要な正子は杏奈に手伝ってもらいメルカリでお屋敷の調度品などをどんどん売りさばいていく。
思い出があると頑なに手放さなかったモノ達は考え方ひとつを見事に手放していく。
整理収納アドバイザーという人様のお宅のモノの整理を仕事にしているものとして、不必要なものは捨てましょう、という考え方がベースになっていますがここまでやってくれると痛快です。
読みどころ2:マジカルニグロについて
この本のタイトル「マジカルグランマ」はマジカルニグロがもとになっているそうです。私、マジカルニグロという言葉を知りませんでした。ウィキペディアによると、
特にアメリカ映画において白人の主人公を助けに現れるストックキャラクター的な黒人のことである[1]。しばしばすぐれた洞察力や不思議な力を持った存在として描かれるマジカル・ニグロはアメリカにおいて長い伝統を持つキャラクター類型である。
と書かれてありました。
おばあちゃんだから、白髪で優しくて孫思いで日向ぼっこしているというイメージ。
無意識なものです。この本を読んでその壁をぶち壊しちゃってください。もちろん高齢者に限らず、です。
普段の暮らしの中で準拠枠(ものごとを判断するときの基準となるものの見方)にとらわれすぎていることってありませんか。このダイバーシティが重んじられ始めた世の中で本当にナンセンス!キャリアコンサルタントや整理収納アドバイザーに限らずですが、準拠枠を取り払わないと本来の仕事はできません。
読みどころ3:お屋敷でとれる野菜や台所にあるもので作る料理が素晴らしい
これを読んで、実質的に私の中で何が変わったかというと、ごはんを作る時に家にある物で何とかしようという気持ちが沸き上がってきたこと。お金のない正子は台所にしまわれたそうめん、庭でとれた紫蘇のジュース、棒状にして冷凍しておいた市松模様のクッキーなど、ちょっと手をかけただけのごちそうを作り出します。表現が素晴らしくおいしそう。
たった一人で四玉の新キャベツを運び、翌日の朝食はキャベツ尽くしだった。
玉ねぎと痛めたキャベツ、コンビーフをたっぷりのせチーズに焦げ目のつけた食パン、コールスロー、キャベツとじゃがいものポタージュ。
(中略)
昨日からバターを使うことはやめたので、いずれも風味は物足りないがお腹にたまるものばかりだ。
目に浮かびませんか、高級ではないけれど贅沢な朝食。
私はちょっと食欲不振な時期がありましたが、友達からのアドバイスとこの本に助けられました。
正子の自意識過剰なところやわがままなところは実はあまり好きではありませんが、裏を返せばそれは彼女の純粋さ。結局のところ自分の人生なのだから人様に迷惑をかけなければ自分勝手に生きていかなきゃつまらないとこの本を読んで思いました。